集中して考えることで、より頭の良い子を育てています
東峰保育園は、幼児教育に囲碁を取り入れている珍しい保育園です。集中して考えることで、より頭の良い子を育てています。年長組になる頃には19路盤で対局できるようになり、小学生になると終局まで碁を打てるようになります。
園長の吉沢偉仁(よしざわひでひと)は、囲碁を幼児教育に取り入れるため、日本棋院栃木県本部である栃木県囲碁学校の戸塚校長に協力を求めました。しかし、最初は「保育園児に囲碁なんてわかるはずがない」と断られ、追い返されたといいます。
それでも園長は諦めませんでした。戸塚校長を何度も訪問し、熱心に説得を続けました。
園長は、戸塚校長の話に熱心に耳を傾け、真摯に同調することで信頼関係を築きました。そして、戸塚校長自身の幼少期の経験(碁石で五目並べをして遊んでいたこと)を引き出し、保育園児でも囲碁の楽しさに触れることができる可能性を伝えました。
その結果、園長の熱意が実り、東峰保育園内で囲碁教室を開くことができました。
このエピソードは、東峰保育園が新しい教育方法を導入する際、単なるアイデアに留まらず、園長の強い情熱と行動力によって実現していることを示しています。
囲碁導入のきっかけ
海外留学での経験:園長は海外留学中に、「お前は日本人なのにどうして囲碁が打てないのか?」と言われたことが心に深く残りました。この経験から、日本の伝統文化を継承することの重要性を痛感したといいます。
国際的な視点:将棋は日本では広く知られていますが、国際的にはマイナーな存在です。一方、囲碁は国際的にも重要な文化であると園長は認識しました。
『ヒカルの碁』ブーム:1999年から2003年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載され、囲碁ブームを巻き起こした漫画『ヒカルの碁』がきっかけで、園長自身も囲碁を学び始め、幼児教育への導入を考えるようになりました。
東峰保育園では2015年3月から囲碁教室が始まり、毎週金曜日の午後に日本棋院栃木県本部から先生が指導に来ています。子ども達は楽しみながら囲碁を学び、半年で10級程度の上達が見られるなど、その効果を実感しています。この教室には年中児、年長児だけでなく小学生も参加しています。
東峰方式を行う上でも、落ち着いてものを考える訓練として、囲碁は重要な位置づけとなっています。
幼児教育に囲碁を導入した理由
囲碁は子どもの頭脳を最大限に引き出す最高の頭脳ゲーム
囲碁と将棋を比較して、園長は以下のように考えています。
囲碁と将棋の違い:「囲碁を打てる人は将棋も指せるが、将棋を指す人で囲碁を打てる人は少ない」という言葉から、囲碁の方がより複雑な思考力を要求するゲームだと捉えています。
「神様が作ったゲーム」:囲碁は「神様が作った最高の頭脳ゲーム」、将棋は「人類が作った最高の頭脳ゲーム」という言葉にもあるように、囲碁が持つ本質的な深さに魅力を感じています。
思考の訓練:囲碁は盤全体を俯瞰(ふかん)しながら「地」を作っていくゲームであり、何千通りもの手を頭の中でシミュレーションしながら石を打つ必要があります。このプロセスが、子どもの脳を常にフル回転させ、高い思考力を養うと考えています。
園長は、囲碁合宿で子どもたちが寝る間も惜しんで囲碁の問題集に夢中になっている姿を見て、「頭がいい」とは、この「常に頭をフル回転させている状態」であると確信しました。これは、スポーツ選手が走り込みで体力をつけるように、頭脳も使わなければその力を出し切れない、という考えに基づいています。
このように、東峰保育園は囲碁を通じて、子どもたちの潜在的な思考能力を最大限に引き出すことを目指しています。