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創立50周年記念作品に込めた、子ども達への願い | 園長:吉沢偉仁の思い | 東峰保育園 公式


社会福祉法人久祐会 東峰保育園

園長 吉沢 偉仁


時計の針を、今から十数年前に巻き戻します。


37歳だった私は、生死の境をさまよう重い病に倒れ、病院の個室で横たわっていました。


腕に刺された一本の針からは、病状を抑えるための薬剤や、絶食状態の身体を保つための栄養剤など、点滴台に吊るされた何種類もの薬が静かに身体へと流れ込み続けていました。絶対安静を強いられ、身動き一つ取れない日々。


医師から告げられた厳しい宣告を前に、私の心にあったのは強い決意などではなく、「ああ、もうこれ以上は生きられないのかもしれないな……」という、静かな諦めの境地でした。


天井を見つめるだけの単調な時間の中、ふと手元にあった携帯型の電子端末の画面を眺めていたとき、何となく目に留まり、読んでみようと思ったのが福澤諭吉の『学問のすゝめ』でした。


「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」


あまりにも有名なこの言葉に続く一節を読み進めるうちに、気力を失いかけていた私の心は大きく揺さぶられました。


人は生まれながらに平等であるはずなのに、現実の世の中を見渡せば、賢い人もいれば愚かな人もいる。豊かな人もいれば貧しい人もいて、社会の重い責任を担う立場に立つ人もいれば、人に使われる立場にとどまる人もいる。その差は、まるで雲と泥ほどの開きがある。

なぜ、これほどの違いが生まれるのか。


福澤はその理由を、古くからの教え『実語教』を引き、極めて明快に示していました。


「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」――と。


生まれつきの身分や貧富の差ではなく、ただひたすらに「自ら学ぶか、学ばないか」。頭を使い、物事の道理を知り、責任を伴う仕事をやり遂げる者こそが、社会を支える「身分の重き人」となる。


小さな画面越しにその教えに触れたとき、「もし万が一にも回復することができたなら、子ども達が自らの足で立ち、幸せに生きていくための本物の教育を遺したい」という思いが、心の奥底から静かに湧き上がってきたのです。


昭和50年に東峰保育園が誕生してから、半世紀の月日が流れました。


私は創立第1期生としてこの園で育ち、25歳という若さで園長職を引き継ぎました。それは、創立者である先代(母)から「保育内容で日本一になってほしい」という重い願いを託された瞬間でもありました。


以来30年間、毎日欠かさず現場に立ち、自分でも「苦しかった」と思うほどがむしゃらに働き続けてまいりました。そんな歩みを国が認めてくださり、このたび「藍綬褒章」という、身に余る褒章を授かることとなりました。あまりに大きな光栄ですが、これまでの苦労が報われたような気がして、知らせを受けた時は思わず涙がこぼれました。これもひとえに、温かく支えてくださった地域の皆様、保護者の皆様、そして現場を共にしてくれた職員たちのおかげであり、深く感謝の念に堪えません。


母は創立一周年を迎えた際、敷地内に「伸びゆく子供」の石碑を建立しました(新しくなった現在の園舎では、正面の角に設置しております)。


そして50周年という大きな節目を迎え、未来を見据えた今、私は母の残した石碑のように、現代の技術を活かした「デジタルの記念碑」を遺したいと考えました。


それが、今回制作・公開いたしました【東峰保育園創立50周年記念動画】園児が世界へ響かせる『学問のすゝめ』現代語訳!自立して生きる「独立自尊」の宣誓です。


▼ 記念動画はこちらからご覧いただけます



本作では、園児たちが暗唱しやすく、また保護者の皆様にも真意が真っ直ぐ伝わるよう、冒頭部分をわかりやすい現代語に訳して構成いたしました。


「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言われています。


つまり、人は天から生まれてくるとき、誰もが平等であり、生まれつき身分の貴賤(きせん)や上下の区別などありません。人間として、自分の身も心も働かせ、世界にあるすべてのものを活用して衣食住を満たし、お互いの自由を邪魔することなく、それぞれが快適に世の中を渡っていけるように作られているのです。


しかし、今のこの人間世界を見渡してみると、賢い人もいれば愚かな人もいます。豊かな人もいれば貧しい人もいます。身分の高い立場に立つ人もいれば、人に使われる立場にとどまる人もいて、その違いはまるで雲と泥ほどの差があります。


その理由は、いったいどこにあるのでしょうか?


理由は極めて明白です。


『実語教』という古くからの教えに、「人は学ばざれば智なし、智なき者は愚かな人となる」とあります。つまり、賢い人と愚かな人の違いは、ただ「学ぶか、学ばないか」によって生まれるものなのです。


また、世の中には「難しい仕事」と「易しい仕事」があります。


難しい仕事をする人を身分の高い人(重き人)と呼び、易しい仕事をする人を身分の低い人(軽き人)と呼びます。


頭を使い、責任を伴い、社会に大きな影響を与える経営、政治、教育、法律、理数といった「難しい仕事(重き仕事)」は、学問をしっかり修めた者でなければ決してやり遂げることができません。


だからこそ、深く学問を修めた者は、社会の重い責任を担う立場に就き、豊かな生活を送ることができるのです。一方で、学問を怠り、頭を使わない易しい仕事しかできない者は、人に使われる低い立場にとどまり、貧しい生活を余儀なくされます。


身分の高い・低い、豊かな・貧しいという差は、決して生まれつき決まっているものではありません。


ただひたすら学問に励み、物事の道理を知る者は身分の高い豊かで重い立場となり、学問を怠り知識のない者は身分の低い貧しい立場となる。ただそれだけの違いなのです。


福澤諭吉がここで説いているのは、単なるテストのための暗記ではなく、「自らの頭で考え、社会を支える責任を引き受けるための生きた学び(実学)」の大切さです。


当園で大切にしている音読や読書活動も、決して知識を詰め込むためのものではありません。


豊かな言葉をたくさん耳から取り入れ、語彙を増やすこと。言葉を通じて本の中に広がる美しい情景をありありと想像し、登場人物の悲しみや喜びに触れて人の感情を深く理解すること。そして、それらを土台として、物事の筋道を自分の頭でじっくりと考えられるようになってほしい――それこそが、私たちが子ども達に願う「学びの原点」です。


言葉という確かな道具を手に入れた子ども達は、暗唱を通して『学問のすゝめ』の真意を心で受け止め、堂々とした眼差しでその思いを声に乗せて届けてくれています。


この記念動画は、日本語だけでなく多言語字幕にも対応させました。


大変ありがたいことに、ベトナムの幼児教育における最高峰の専門機関である「ベトナム国立教育短期大学(NCE)」の学長より正式なご招待をいただき、私自身の発表原稿を動画に収めてお届けいたしました。今月中旬に開催される全国教育セミナー(国際フォーラム)には、ベルギー、オーストラリア、中国など世界各国の教育関係機関や専門家が集うとお聞きしております。


国や言葉は違っても、「子ども達が自立し、心豊かに幸せな人生を歩んでほしい」という教育の願いは世界共通です。


人は誰もが、何もない真っ新な「空っぽのたらい」のような状態で生まれてきます。そこに自らの努力で学びの水を注ぎ、自分のためだけでなく、周囲の人々や社会のためにその水を巡らせていくこと。その利他の心こそが、巡り巡って自分自身の人生をも豊かにしてくれます。


澄んだ瞳で『学問のすゝめ』を世界へ響かせる園児たちの姿は、これからの時代を力強く切り拓いていく「独立自尊」の確かな芽生えそのものです。


母から受け継いだ願いを胸に、そしてこのデジタルの記念碑を一つの道標として、東峰保育園はこれからも子ども達の20年先の幸せを見据え、一歩一歩誠実に歩みを進めてまいります。


www.youtube.com


                               


English Summary (AI Translation)

This article introduces Higashimine Nursery School’s educational philosophy, centered on Independence, Literacy and Kanji Education, and the ability to think and express oneself through rich language. Inspired by Yukichi Fukuzawa’s An Encouragement of Learning, the school encourages children to learn actively, develop their own ideas, understand others’ feelings, and grow into responsible, self-reliant individuals. Through reading, recitation, and multilingual communication, the children’s voices carry the spirit of “independence and self-respect” to audiences around the world. The school’s 50th-anniversary project expresses its enduring wish for every child to build a fulfilling and happy future through learning.

※This summary was generated by AI to help international readers.

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