これから私は、どこへ向かっていくのか | 園長:吉沢偉仁の思い | 東峰保育園 公式
── 評価への戸惑いと、私自身の人生(原点)に還る保育
近頃、周囲からの評価や視線が変わってきたことを、ひしひしと感じております。表彰や発表の機会をいただくなど、長年の取り組みが認められる場面が増えました。
ですが、正直なところ、私の胸の中にはどこか戸惑いにも似た感覚が残っているのです。
自分の人生と直感から紡いできたもの
私が取り組んできた保育は、何か特別な理論を鵜呑みにしたものではありません。私自身がこれまでの人生で経験し、挫折し、心を動かされた「直感」の中で、「面白い」「子ども達に絶対に必要だ」と心底思えたことを、ただ無我夢中で形にしてきたに過ぎません。
漢字の音読や古典の暗誦、観察画を通じた思考力の育成、そして野外教育や食育。それらは全て、私自身の生き様や経験と地続きのものです。
先日、テレビ番組で脚本家の倉本聰さんが、「自身の経験をもとに『北の国から』の脚本を書いている」とお話しされているのを拝見しました。その言葉を聞いたとき、深く胸に込み上げるものがありました。私自身も全く同じなのだと。
私の行う全ての保育計画や実行の根底には、私自身が人生で味わった喜び、悔しさ、そして再生の記憶が流れているのです。
富良野の風と、涙の中にあった「生の歓び」
かつて舞台への夢を抱いて生きていた私にとって、倉本聰さんは大好きな存在でした。富良野塾の公演初日、劇場出口におられた倉本さんに、演劇に深く感動し涙を流しながら「素晴らしかったです」とお声をかけさせていただいた日のことを、今でも鮮明に覚えています。夢を諦める悔しさを抱えていたからこそ、若者達が人参の収穫で泥にまみれながら成長し葛藤する姿が、魂に突き刺さったのです。
また、大病を患い、一度は人生を諦めかけたこともありました。そんな私を救ってくれたのは、妻が差し出してくれた『自転車生活』という一冊の本でした。35歳のときに夫婦で稚内まで自転車で走破した、あの苦しくもかけがえのない思い出が蘇り、「もう一度自転車に乗って夫婦で旅をしたい」という生きる希望が湧いてきました。
再び挑戦した富良野でのライディング。激しいアップダウンに心臓がバクバクと脈打ち、「自分は今、生きている」という強烈な歓びが身体中を駆け巡りました。
富良野を自転車で走るとき、私の頭の中にはいつも『北の国から』の曲が流れます。そして、松山千春さんの『大空と大地の中で』の曲に、何度も勇気をもらうのでした。私にとって北海道は、人生を支え続けてくれる特別な場所なのです。
誰にも明かせない仕事のつらさから、富良野の大自然の中で溢れ出る涙を流したとき、私はようやく「素の自分」に還ることができました。毎年訪れた富良野の景色は、私にとって生命の原風景となりました。
答えはいつも、目の前の子ども達の中に
「実践者でありながら、自ら問いを立て理論化する臨床家のようだ」と評していただくことがあります。ですが、どれほど評価を受けようとも、私の中で決して変わらない問いがあります。
「これから私は、どこに向かっていくのだろうか」
その答えは、私自身の経験と、今目の前にいる子ども達の姿の中にあります。
自分が人生の中で体感した「本物の感動」や「命の躍動」を、子ども達にも手渡したい。そして、今日子ども達が何を感じ、どう生きていこうとしているのかを、毎日しっかりと観察すること。
「人と違う」と言われた時期も、評価をいただく現在も、私がなすべき本質は何一つ変わっていません。私はこれからも、自分の人生の経験から湧き出る直感を信じ、目の前にいる子ども達の真実の姿を見つめ続けてまいります。
これからどこへ向かうのか──。
その答えは、今日も目の前にいる子ども達の輝く瞳と、私自身の歩んできた道筋の中に、すでにあるのです。
株式会社子ども・表現活動研究所
会長 吉沢 偉仁(Yoshizawa Hidehito)
[ 幼児教育アンバサダー / 東峰保育園 園長 ]
理念・ミッション
当研究所は、幼児期からの本格的な漢字・音読教育および豊かな人間形成を願い、その実践を広くお届けする「教育アンバサダー(広報・啓発拠点)」として歩んでおります。
30年にわたる現場での実践の積み重ねと、文部科学大臣表彰をはじめとする身に余る評価を励みに、言葉の力を通じて子どもたちの「独立自尊の精神」を育む教育法を、全国の教育現場や保護者の皆様へ心を込めて発信・普及してまいります。
役員紹介 会長(幼児教育アンバサダー):吉沢 偉仁
30年にわたり東峰保育園園長として、子ども達の可能性を信じる独自の「東峰方式(漢字・音読・総合教育)」を確立。音読コンクール全国2位(読売新聞社賞)など子ども達と共に歩んだ実績のほか、宇都宮市長表彰、栃木県知事表彰、厚生労働大臣表彰、文部科学大臣表彰を拝受。長年の教育振興への貢献に対し、最年少にて藍綬褒章を受章。作新学院大学リカレント講座における特別招聘講演をはじめ、高等教育機関での講話を通じた指導者育成にも注力。現在は株式会社子ども・表現活動研究所 会長として、幼児教育の発展と啓発活動に真摯に取り組む。