般若心経を導入したことで変わる保育
吉沢偉仁(よしざわひでひと)が考案した東峰方式(ヒガシミネ方式)は、幼児教育に般若心経を取り入れるという非常にユニークなアプローチをしています。これは、一般的にはまだ珍しい取り組みだと思われます。
東峰方式における般若心経導入の効果
「空」の思想による発達支援
東峰方式(ヒガシミネ方式)では、般若心経が伝える「空」の考え方を取り入れることで、発達障害の子ども達が抱える生きづらさに共感し、受け止めることを重視しています。発達障害のある子ども達は、時に集団行動に馴染めなかったり、指示通りに動くことが難しかったりすることがあります。このような状況で、彼らを「支援」ではなく「指導」しようとすると、パニックを起こすこともあり、クラス運営が難しくなりがちです。
しかし、「空」の思想を理解することで、保育士は発達障害を持つ子どもの特性を異なる視点から捉え、それぞれの行動の背景にある困難さに共感できるようになります。これにより、従来の「昭和の保育」のような一律な指導ではなく、多様性を受け入れる「令和の保育」へと変化し、子ども達がそれぞれのペースで安心して成長できる環境が生まれます。
共感と尊重の醸成
この「空」の考え方に基づく共感的な姿勢は、子ども達、特に発達に特性のある子ども達の心を受け止めることに繋がり、「共感・尊重・成長」という東峰方式(ヒガシミネ方式)の理念を育んでいます。子ども達は、受け入れられていると感じることで、自己肯定感を育み、自信を持って様々なことに挑戦できるようになります。
「幸せな人生」への導き
東峰方式(ヒガシミネ方式)の最終目標は「幸せな人生を歩むこと」ですが、これはお釈迦様の教えから導き出されたものです。般若心経は、イライラやモヤモヤした心を穏やかにする「心の練習」や「心の呪文」として捉えられ、唱えることで心を落ち着かせ、自分自身の内面と向き合うきっかけを与えます。これにより、子ども達が将来、どのような困難に直面しても、自分らしく幸せに生きるための心の土台を築くことを目指しています。
モスクワ留学で得た多様性の認識
国語教育の重要性
モスクワでの経験から、母語である日本語の体系が確立していない段階での英語教育の無意味さを認識し、国語教育の重要性を再確認しました。国語は思考力、感性、コミュニケーション能力の基盤であり、これらの能力は幼少期からの国語教育によって培われると考えています。
多様性の尊重
日本においては、ともすればアメリカ中心の視点になりがちですが、モスクワで様々な人と交流する中で、「世界はアメリカ中心に回っているわけではない」という実感を強く持ちました。これは、エマニュエル・トッド氏が提唱する「世界の多様性」の考え方にも通じるものがあります。トッド氏は、家族構造の分析を通して、各地域の政治的イデオロギーや経済成長の多様性を説明しており、世界が多様な要素から成り立っていることを示しています。
機動戦士ガンダムの例えは、まさにこの多様性の本質を捉えています。地球連邦軍とジオン軍の双方にそれぞれの正義があり、どちらか一方だけが絶対的な正義ではないという理解は、多様性を尊重する上で非常に重要です。多様性とは、単に異なる特性を持つ人々がいるだけでなく、それぞれの違いを認め、理解し合うことを意味します。これは、性別、年齢、国籍、人種だけでなく、価値観、宗教、経験、嗜好といった内面的な違いにも及びます。
多様性を受け入れることの意味
多様性を受け入れるということは、形式的に相手を受け入れるだけでなく、真の理解と適切なコミュニケーションによって実現されます。「誰もが多様性を受け入れる側であると同時に、受け入れられる側でもある」という認識を持つことが大切だと思います。このような視点は、東峰方式(ヒガシミネ方式)の「共感・尊重・成長」という理念に深く結びつくこととなりました。
初代園長(吉澤久子)の保育観
私の母(吉澤久子)の保育観は、保育園でありながらも幼稚園に負けない、質の高い教育を目指すという、栃木の風土とは異なる、関西で受けた教育に基づいたものでした。
全日本幼児教育連盟「音体教育理論」の導入:畠山國彦氏が提唱する音体教育理論を取り入れ、日本太鼓やマーチングを積極的に実践していました。これは、音楽を通した表現活動や集団での協調性を育むことを重視し、非常に先進的な取り組みだったと思います。
幼児体育や野外教育の導入:福岡にある幼児体育を指導する会社で活躍されていた講師が、実家のある栃木県に戻ってくることになり、その先生の第一号となる教室が東峰保育園から始まりました。九州では幼児教育の一環として、キャンプなど野外活動を行っているのを聞き、東峰保育園でもサマーキャンプやスノーキャンプを行うことになりました。また、母はレクリエーションインストラクターの資格も取り、野外活動ではレクリエーション活動を積極的に行っていました。
基礎教育の重視:ひらがなの稽古など、幼稚園で行われるような基礎的な教育にも力を入れ、子ども達の知的な発達も大切にしていました。
「日本一の保育」への挑戦:母からの「日本一になれ」という強い期待に応え、最高の保育を追求しようと、吉沢偉仁は日々努力を重ねてきた結果…。
葛藤と「東峰方式(ヒガシミネ方式)」の確立
先代園長(吉澤久子)の「日本一の保育」を目指す姿勢は、東峰保育園が数々の賞を受賞するにつれ、「なぜ自分の子でもないのにそこまでするの」「やっているようなパフォーマンスでいい」など、晩年の「ほどほどで良い」という言葉の間の葛藤は、並々ならぬ気持ちがありました。
しかし、その母の死をきっかけに、自身が深く考え抜き、自身の保育理念、そして「東峰方式(ヒガシミネ方式)」を確立させました。これは、新たな時代に合わせた、二代目ならではの保育の形を追求した結果となりました。昨年、受賞した「文部科学大臣表彰」などは、亡き母に見せてあげたかったです。