東峰方式(ヒガシミネ方式)とモンテッソーリ教育の比較
東峰方式(ヒガシミネ方式)とモンテッソーリ教育は、どちらも子どもの自律的な成長を促す点で共通していますが、いくつかの違いがあります。
東峰方式(ヒガシミネ方式)
東峰方式(ヒガシミネ方式)は、東峰保育園が独自に考案した保育方法です。
○理念と特徴
「日本一の保育内容」を目指す:園長の吉沢偉仁氏が約30年の実践と先代園長の志を受け継ぎ、子どもたちが幸せな人生を歩むことを最終目標としています。
自律心の育成:子どもが自ら「好き(得意)」を見つけ、可能性を最大限に伸ばすことを重視し、20年先を見据えた教育を行います。
成功体験の重視:「できた」という成功体験を積ませることで、子どもの将来の力を育むことを大切にしています。少人数制でじっくりと関わり、多くの経験やチャレンジの機会を提供します。
バランスの取れた育成:知育、体育、徳育、食育、才育をバランス良く育むことを目指しています。
先生の得意を活かす:先生方が自身の得意分野を活かして保育を行う点が特徴です。
具体的な実践:体操教室、音楽教室、美術教育、漢字仮名交じり教育、野外教育、ピアノ、囲碁などを通して非認知能力を伸ばします。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、イタリアの医師マリア・モンテッソーリによって考案された教育法です。日本では1960年代から広まり、多くの幼稚園や保育園で取り入れられています。
○理念と特徴
自己教育力の尊重:子どもには自ら育つ「自己教育力」が備わっているという考えが根底にあります。大人は、子どもがこの力を十分に発揮できるような環境を整え、自発的な活動を促すことが重要とされます。
「責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける人間を育てる」という目的:自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てることを目指しています。
個別学習の重視:集団学習が主体の日本の一般的な教育とは異なり、子どもの自主性を尊重し、個人のペースで学ぶ個別学習が特徴です。
教具を用いた動的な学習:座学中心ではなく、子どもが自由に動き回り、知的好奇心を刺激する教具を使って学ぶことが推奨されています。手を使うことで脳の発達を促すことを重視します。
継続的な観察による評価:テストや試験ではなく、継続的な観察を通じて子どもの成長を見守り評価します。
敏感期の重視:子どもが特定の事柄に強い感受性を示す「敏感期」を捉え、その時期に適した活動を提供します。例えば、感覚教育、言語教育、算数教育、日常生活の練習などが挙げられます。
縦割り保育:異なる年齢の子どもたちが一緒に過ごす縦割り保育を行うことがあります。
ヒガシミネ方式とモンテッソーリ教育の比較
| 特徴 | 東峰方式(ヒガシミネ方式) | モンテッソーリ教育 |
| 提唱者/発祥 | 東峰保育園(日本) | マリア・モンテッソーリ(イタリア) |
| 最終目標 | 子どもの幸せな人生、自律心の育成 | 自立し、有能で、責任感と思いやりのある人間育成 |
| 学習形態 | 集団活動と個別活動のバランス | 個別学習、教具を用いた自発的な活動 |
| 先生の役割 | 得意分野を活かした指導を提供 | 環境を整え、子どもの自発的な活動を助ける |
| カリキュラム | バランスの取れた知育・体育・徳育など、独自の活動 | 敏感期に応じた教具を用いた活動、日常生活の練習 |
| 評価方法 | 非認知能力の育成を重視 | 継続的な観察による成長の評価 |
※「非認知能力」という言葉は、日本の教育界でかなり使われており認知度も高いと感じています。しかし、伯父の話も一理あると思いますので、「自立的思考・行動能力」という言葉を推奨したいと思っています。(伯父の話については、2025.8.12投稿の「非認知能力を育む保育について」をご覧ください。)
https://higashimine.net/houshiki07/
自律心を育てる上での難しさ
1. 「自律」と「自立」の違いの理解と実践
「自律」とは、自分でルールを作り、自分の行動を統制・制御しようとすることであり、自分をコントロールする意味合いが含まれます。
一方、「自立」は他者に頼らず独立している状態を指します。この二つの概念を混同せず、それぞれの段階や特性に応じたアプローチをすることが重要です。
特に幼児期においては、自己中心的になりがちな子どもに対して、社会のルールや他者との関わりの中で自分の行動を「律する」ことを教えるのは難しい側面があります。
2. 言葉での「教え込み」の限界
幼い子どもにとって、言葉だけで理屈を説明しても、理解させるのは非常に困難です。親や保育者が一生懸命説明しても、子どもがどこまで理解しているか把握しづらく、コミュニケーションの難しさが生じます。
言葉を使うコミュニケーションがまだ十分に発達していない幼児期に、どのようにして「自律心」という抽象的な概念を伝えていくかが課題となります。
3. 子どもに「やらせすぎない」「与えすぎない」こと
子どもの自律心を育むためには、「自分でやりたい」という気持ちを尊重し、様々な経験を通じて達成感を味わわせることが大切です。
しかし、親や保育者が先回りしてすべてをやってしまったり、子どもが求める物をすべて与えてしまうと、子どもは自分で考えたり判断したりする機会を失い、親に依存する傾向が強くなる可能性があります。
子どもに任せることには忍耐が必要であり、危険や手間を避けたいという気持ちとの葛藤が生じます。
4. 保護者との連携
「こんな子に育ってほしい」という保護者の願いは尊いものですが、そのための手段や方法が子どもに合っていないと、心のすれ違いが生じ、自律心を育むことが難しくなる場合があります。
園と家庭とで「自律心」育成に対する共通理解を持ち、一貫したアプローチをすることの重要性は認識されているものの、それぞれ異なる育児観や教育観を持つ保護者との足並みを揃えることには難しさがあります。
5. 発達段階に応じたアプローチ
自律心は、子どもの発達段階に応じて変化します。2〜3歳頃には本能的欲求に基づく衝動的な行動が中心である一方、就学期に向けて周囲の規範を意識し始めるなど、段階的な変化が見られます。
そのため、子どもの年齢や個性に応じた適切な関わり方が求められ、画一的な指導では効果が得られにくいという難しさがあります。
自律心は、子どもが自分らしい人生を歩み、後悔のない人生を送るために不可欠な能力ですが、その育成には多くの工夫と忍耐、そして周囲の理解が必要とされます。